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2007年11月 8日 (木)

<童話>ポン太とトランペット

                                                    夕日 

タヌキのポン太は、いたずらっ子。そして、とってもきかん坊。タヌキ山の子ダヌキの中で一番力が強くて、けんかなら誰にも負けないよ。だから、ポン太はタヌキ山の小さな王様さ。いつも大ぜいの子ダヌキの家来を、後ろに従えていばっているんだ。
 とりわけポン太の腹ぢからは、すごいんだ。ちょっと気に入らない子ダヌキがいる時にはね、思いっきり空気を吸ってお腹をパンパンにふくらませて、相手の子ダヌキのお腹をグイッと押すのさ。すると子ダヌキは、たちまちスッテンコロリン・・・いつもポン太の勝ちだよ。

Picture1_2

ポン太は王様だから、お腹をポンポコポン・・・と叩くと、家来の子ダヌキが急いで集まって来るんだ。その時にはね、家来たちは必ず木の実や草の実を少し、王様にささげなくてはならないのさ。もしもなにも持ってこなかったら大変だよ。すぐにポン太王様の腹ぢからで地面にスッテンコロリンとされちゃうよ!おまけにその日はずっと、仲間はずれにされるんだ。だからね、だれもポン太の命令にはさからえないのさ。

ある日のことだったよ。ポン太は、すてきな金色に輝くものを手に持って、家来たちの前にあらわれたのさ。それはトランペットだったんだ。子ダヌキたちが、口々にこう言い始めたよ。

「きれいだなぁ!きらきら光っているよ」
「ねぇーそれをどうしたの?まるで新品みたいだ。いったいどこで、そんなすごいものを手に入れたの?」
「ねぇーもっとよく見せてよ。いいなぁ!」

 するとポン太は、トランペットを高々とさしあげて、自慢げに言ったのさ。


「実はね、さっき拾ったのさ。道ばたの枯れ葉やゴミをきれいにしていたら、なんとこれが落ちていたと言うわけさ。・・・ゴホッ!」

 でも・・・なんだか少し変だよ。だってさ、いつも食べかすを道に捨ててばかりいるポン太が、お掃除をしてたら・・・なんていうんだもの!でもね、トランペットの美しさに心をうばわれている子ダヌキたちは、そんなことには、ちっとも気づかないのさ。

「こんないい音が出るんだよ。」
 と言って、ポン太はトランペットを吹いてみせたんだ。

 
ッテケテー  トッテケテー
それは子ダヌキたちにとって、初めて聞くすてきな音色だったよ。とても力強い、心にしみる音だったのさ。

 
一匹の子ダヌキが、おそるおそるポン太にこう頼んだ。
「ねぇ、ちょっとだけさわらせてよ。ぼくにも吹かせてほしいなぁ」
「だめだよ!これは、おれ様が拾ったんだからね。おれ様だけの宝さ」
  ポン太はそう言うと、またゴホッと変な咳をしたのさ。

  さて、このゴホッはいったい何なのだろうね?とてもおかしな咳だよ。
  本当のことを言うとね・・・・ポン太は、このピカピカに光る物を拾ったわけではないんだ。その時のことを思うと、ポン太は心がチクッとするんだ。でも、ほんのちょっぴりだけだよ。そんなのは、すぐに直っちゃうからさ。

 夕方になるとね、ポン太はいつもさびしい気持ちになるんだ。なぜってね、家来の子ダヌキたちが、みんな親ダヌキの待つ穴へと帰ってしまって、ポン太はひとりぽっちで残されてしまうからさ。というのも、ずっと以前ポン太の父さんと母さんが、人間に捕まってどこかへ連れていかれてしまったからなんだ。うわさによれば、殺されて太鼓の皮になってしまったらしいよ。それを聞いた日、ポン太は穴の中で、一人で思いっきり泣いたんだ。

そして、その次の日から、ポン太は突然あばれん坊になってしまったよ!どうしてかって?ポン太自身にも、よくわからないんだ。

昨日の夕方のことだったよ。お日さまがね、山すそに少しずつ顔をかくそうとしていた頃に・・・一人の人間の男の子が、山道の大きな木の後ろで休んでいたポン太のそばを通りかかったんだよ。その人間の男の子は、手になんだかキラキラ光る物を持っていたんだ。その男の子は黒づくめの洋服を着ていて、目にも何かがキラリと光っていたよ。Picture2b

「どこへ行こうというのかな?よし!人間に仕返しするいいチャンスだ」ポン太は、そう思った。それで、こっそりその子の後をつけたんだ。
 男の子は山の頂上まで登り、それから心をこめてトさランペットを吹き始めたよ。とっても澄んだ心にしみる美しい音だった。
「お父さん!僕の吹くトランペットの音が聞こえましたか?どうぞ、やすらかにお眠りください。僕、お父さんみたいに、もっとトランペットを上手に吹けるように頑張ります」

 
男の子はトランペットをかたわらの草の上に置くと、夕焼けの空に向かって、こう思いっきり叫んだんだ。その時だった!ポン太は、さっと男の子のそばにかけよると、置いてあったトランペットをひったくると、山道をかけにかけたんだ。男の子の泣き叫ぶ声なんか、ぜんぜん聞こえないふりしてさ。
ポン太は、やさしさなんてどこかになくしてしまったのかな。でも・・・本当はその晩ずっと、あのトランペットを吹いていた男の子の悲しそうな泣き声が気になって、なかなか眠ることができなかったんだよ。
「仕返しなんて、ちっとも楽しいことじゃないや!」ポン太はつくづくそう思ったんだ。
 
 
朝がやってくると、ポン太は自分にいっしょうけんめい言い聞かせたのさ。
(あれはーーーーー取ったんじゃないよ。道ばたに落っこちていただけなのさ。うん、そうさ!誰かが落っことしたんだよ。ぼくはたまたま通りかかって、それを拾っただけのことさ!)

 それから数日たったある夕方、ポン太が山の頂上近くにある大きな木の枝に腰をかけて、ぼんやりとスミレ色の空をながめていると・・・あの男の子がすぐ近くまでやってきたんだ。ポン太の姿は、木のかげにかくれていて、男の子からは見えなかったよ。
「ねぇータヌキさん、お願いです!もしも聞こえていたら、心からのお願いです。僕の大切な大切なあのトランペットだけは、どうか返してください!そのかわり、僕の持っているおもちゃは、何でも好きなのをさしあげます。僕の家は、この山のふもとにあります。緑の屋根に白い屋根の小さな家です。垣根に赤いバラを伝わせていますから、すぐわかります。僕の部屋の窓を開けておきますから、そこに返してください。あのトランペットは、パパの形見なのです。パパはついこの間、病気で亡くなりました。そして今は、あの高い空の上にいるのです。パパは音楽家で、病気療養を兼ねてこの村に住んでいて、村の子どもたちに笛を教えていたのです。パパはトランペットを吹いていました」
  男の子は一生けんめいに、そう話したよ。

(ふーんだ!いくら頼まれたって返すもんか!いい気味さ)
  ポン太はプイッと横を向いて、聞こえないふり・・・。

  男の子は、次の日もその次の日も、薄暗い山道を登って来たんだ。そして、「どうか、あのトランペットを返してください。」と涙ながらに頼むのさ。でも・・・ポン太はあいかわらず知らんふり。そして、家来の子ダヌキたちからせしめた木の実を、おいしそうにかじっているばかり・・・。
(ふーんだ!おれ様はいじわるなんだもん、誰が返すもんか)
  男の子は、目に涙を浮かべながら、トボトボ帰っていくしかなかったんだよ。

  ある夜のこと、ポン太はピカピカにみがきあげたトランペットを抱えて、巣にしている穴を出たんだ。星の美しい夜だったよ。ポン太は山の頂上に行くと、思いっきりトランペットを吹きはじめたのさ。お腹をふくらませたり、ひっこめたりして、一心不乱に吹き続けたんだ。それから・・・どうしたというのだろうか?穴には帰らずに・・・人間たちの住む里の方へと歩いていくのさ。しきりとこう、自分に言い聞かせながら・・・ね。
(おれ様は、たまたま、こっちの道を歩いてみたかっただけなのさ。なにも、あの子の家へ行くわけじゃないよ)

  やがて・・・ポン太の足は、緑の屋根に白い壁の家の前で止まったよ。お月様がそのやさしい光で、ポン太の行く手をてらしてくださっていたんだ。垣根によりそって、色とりどりのつるバラが静かに眠っていたよ。ポン太は、キョロキョロとあたりを見まわした。そして、そのかきねに一ヶ所、庭への出入り口をみつけて、そこからそっと中に入ったんだよ。あの子の部屋はすぐわかったよ。なぜってーーーーーその部屋の出窓だけが開いていて、大きなおもちゃ箱が出ていたからさ。そして、きっと明かりのつもりだろうね・・・そばに虫かごが置いてあってさ、その中にホタルが何匹もいたよ。

 
それから、ポン太はトランペットを抱きしめて、そっとなでてみたんだ。
(返すんじゃないのさ。もう、トランペットを吹くのにあきてしまっただけなのさ)そう、つぶやくとポン太は、思い切ってトランペットを出窓の所に置いて、帰りかけたよ。でもちょっと思い直して、おもちゃ箱の中をのぞいたんだ。ポン太がはじめて見るおもちゃが、たくさん入っていたよ。いろんな種類の自動車、ロボット、ぬいぐるみ人形、飛行機、ゲーム・・・。その中でポン太は、一つの太鼓だけを手にしたよ。それを大事そうにかかえると、自分の穴へ急いで帰ったんだ。

  ポン太は穴に戻ると、太鼓を指でそっとたたいてみたんだ。
  トテトテトン・・・やさしい音がしたよ。

  ポン太はニコッと笑うと、今度はバチで軽くたたいてみたんだ。
  トケトケ トトトン・・・・トケトケ トトトン・・・

  それは、こういう風にも聞こえるよ。

  
  トケトケ トトトン ポン太 元気かい?
  トケトケ トトトン お父さんたちはね、太鼓の皮になってしまったけど
  トケトケ トトトン 今は幸せだよ
  トケトケ トトトン と毎日子供たちにはなしかけているよ

Picture5bloga

  トントン トケトケ ポン太もいい子 トトトン 大好きさ   
   
 
 
いつのまにか、ポン太は眠ってしまったんだよ。次の朝、ポン太は目をさますと、すぐにあたりをキョロキョロ見まわしたんだ。だいじょうぶ!太鼓はちゃんとそばにあったよ。ポン太は太鼓をだきしめて、その皮にそっとほほをくっつけた。それから、やさしくたたいたよ。
 
 
トケトケ トトトン・・・ポン太はなんだか、とってもうれしくなったよ。
 トケトケ トトトン・・・トケトケ トトトン・・・

 
食いしんぼのポン太なのにさ、この朝は変なんだ。だってね、お腹がすいているのも忘れてさ、穴から飛び出していったんだ。そしてね、ポン太はいいにおいのする草をたくさん集めてきて、巣の穴の一カ所に敷きつめたんだ。そしてその上に、そっと太鼓をおいたんだよ。それからね、ちょっと考えて・・・また野原へかけていったよ。しばらくして腕いっぱいに色とりどりの野の花をかかえてきて、太鼓のまわりにかざったよ。

  やがて、ポン太はいつもの場所へ行くと、お腹をポンポコポン・・・とたたいたんだ。さぁ、家来の子ダヌキたちの集合だ!
「あれっ?ポン太の王様!あのキラキラ光ったすてきなものは、どうしたの?」
一匹の子ダヌキが、そうきいたよ。
「ううーん、ゴホッ・・・あれのことかな?」
 ポン太は、またわざとらしくゴホッとせきをして
「あれはね、ゴホッ、もうあきちゃったからさ、昨日の夕方、谷川に捨てたよ!
もう、今頃は流れ流れて深い海の底さ」と、言ったんだ。
「えっ、本当?もったいないなあ!」「おしかったなあ!」
  子ダヌキたちは、口々にそう言いはじめたよ。

  するとポン太は、一段と大きな声でさけんだんだ。
「お前たち、うるさいぞ!静かにしろよ。
 おい!ところで、今日もちゃんと木の実を持ってきただろうな」
 
 
するとね、一匹のやせた子ダヌキが、泣き出しそうな声で、こう言ったよ。
あ、あのぅー、ごめんなさい。ぼく今日は持ってこられなかったの・・・。
 でも・・・仲間に入れてほしいよ」
 
 
さて、ポン太はどうしたことだろうね?ポン太は少しやさしくなったかな?
  いや、ポン太はいつもと同じように、お腹を空気でふくらませるとエイッと、その子ダヌキのお腹を押したのさ。もちろん子ダヌキは草の上に、スッテンコロリン・・・。
  でもポン太は、いつものように仲間はずれにはしなかったよ。
「ゴホッ、あのさ、おれ様はね、仲間に入れたくないんだよ。でもさ、みんなが入れてあげなよって顔をしているからね・・・特別に今日だけ、仲間に入れてあげるよ」

  それから何日が過ぎ・・・ポン太は相変わらず、木の実を持ってこない子ダヌキを、グイッて腹ぢからでいじめているよ。いや、本当は、いじめているふりをしているだけなのさ。げんに、お腹だって、ほとんどふくらんでないよ。
  それに「あーあー、どいつもこいつも弱くって、とてもおれ様の相手にはならないよ」なんて言いながら、ころがした相手を手で起こしてあげているくらいだもの。

 
ポン太にもさ、男の意地というものがあるんだよ。強くてあばれん坊の王様が、急に弱くなったりやさしくなったら、みっともないだろう?
 
でもさ・・・スッテンコロリンって家来の子ダヌキがころぶたびに、本当はね、ぽん太の心のほうが、何倍も何倍もズッキンズッキンといたむんだよ。

   

(ごめんね。本当は木の実なんてどうだっていいんだ。ちっともほしいわけじゃないんだ。でもね・・・)

 そう、心の中でつぶやいているんだよ。

  いつか、ポン太がもう少し大人になったら・・・きっと照れくさがらずに、皆にやさしくできることかもしれないよ。

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                                 <おしまい>

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