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2007年12月24日 (月)

<童話>タンポポ国で見た夢

                        夕日 作

マーヤとユーくんは、どちらも5才になったばかりのかわいい女の子と男の子。
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マーヤは、ママとママ方のおじいちゃま、おばあちゃまと4人で一緒に暮らしています。パパはいません。パパは、マーヤがまだ赤ん坊の時に、ガンというこわーい病気のせいで、みんなより一足先に天国という虹色に輝く美しい国へ行ってしまったそうです。
赤ん坊のマーヤを抱っこしたパパとママの笑顔のすてきな写真を、ママは木彫りのすてきな額に入れて大切に飾っています。ママはお仕事があるので、日中はお家にいません。マーヤは幼稚園から帰ると、おばあちゃまと公園に遊びに行ったりして午後を過ごします。

ユーくんは、パパとパパ方のおじいちゃま、おばあちゃまと三人で一緒に暮らしています。ママはいません。ユーくんがかすかに覚えているママは、いつも哀しそうな顔をしていました。ある夜、ママは突然ユーくんを強く抱きしめて「さようなら!」といって、大粒の涙をこぼしたのです。そうしてそれっきり、ママはユーくんの前から姿を消してしまったのです。ユーくんのパパは、ママと赤ん坊のユーくんと3人で写した写真なんて飾ったりはしていません。そもそもママの写真は一枚もないのです。それどころか、ユーくんがちょっとでもママのことを聞こうとすると、パパは「うるさいぞ!」と、どなりさえするのでした。今ではユーくんには、パパとママが大げんかをして、永遠にさようならをしたことがわかります。ユーくんも、午後になるとおばあちゃまに連れられて、公園に散歩にでかけます。

ユーくんとマーヤは、いつも行く公園で、いつの間にか大の仲良しになりました。そして、おばあちゃま同士もとても親しくなって、マーヤたちが砂場やすべり台で遊んでいる間、楽しげにおしゃべりするようになりました。だから4人とも、毎日公園に出かけるのが、とっても楽しみになっていました。
ユーくんとマーヤは、初めのうち砂場遊びやブランコやすべり台なんかがおもしろかったのに、そのうちだんだんとあきてきました。

「ねぇ、マーヤ、あのきれいな花壇の方へ行ってみようよ」
「ええ、そうね。とってもきれいなお花が、いっぱい咲いているわ」
二人はニコッと顔を見合わせると、花壇の所までかけていきました。季節はちょうど春でしたから、赤、白、黄色のチューリップが一面に咲きそろっていました。
ユーくんが、また言いました。
「ねぇ、マーヤ、あっちに池があるよ。あそこまで行ってみようよ」
マーヤはおばあちゃまたちのことが、ちょっと気になりました。でも・・・二人はベンチに腰かけて、なにやらお話に夢中です。
「そうね、ちょっとだけなら・・・」
その池には、色あざやかなコイがたくさん泳いでいました。
こんな風にして二人は、はじめての小さな探検を楽しみましたが、おばあちゃまたちは全く気づいてはいませんでした。そして、その日からマーヤとユーくんは、広い公園をあちらこちらと少しずつ冒険に出かけるようになりました。もちろん、おばあちゃまたちには内緒です。

そんなある日のことです。二人はいつものようにこっそりと探検をしていて・・・公園の片隅に大きな太い木を見つけました。その木の根元近くに、ぽっかりと大きな穴があいています。小さな子どもなら、かんたんに入れそうな大きさです。
ユーくんが、いたずらっぽい目つきで言いました。
「ねぇ、ちょっと中に入ってみない?」
「そうね、ちょっとだけならいいわよねぇ」
と、マーヤも好奇心に瞳をかがやかせます。
二人は、おそるおそるその穴に入ってみました。中は思ったほど暗くはありませんでした。すぐ目の前に、草のツルで編んだ縄ばしごがたれ下がっていました。
「あれっ?こんな所に縄ばしごがあるよ」
「ねぇ、ユーくん!上の方が少し明るいわよ。ちょっとのぼってみない?」
「うん!ちょっとだけね。」
二人は、その縄ばしごをドンドンのぼっていきました。すると不思議なことに、のぼりきった所は広い野原になっていて、あざやかな黄色のタンポポが一面に咲いていたのです。
「まぁ、すてき!まるで黄色いじゅうたんみたいよ」
「マーヤ、あっちの森の方へ行ってみようよ」Picture66blog


二人は、おばあちゃまたちのことなんか忘れて、すっかりこの不思議な黄色の世界の冒険に夢中です。二人は、森の方へかけていきました。森の木の下にも、タンポポの花があふれていました。
森につくと、木の枝にとまって休んでいた小鳥たちが、いっせいに歌いはじめました。二人を歓迎して、歌であいさつをしてくれているようでした。

 
ピピピー  こんにちは、マーヤ!
 
ルルルー  こんにちは、ユーくん!

そして、甘い香りがぷーんとしてきました。あたりを見わたすと、おいしそうな果物が近くの木の枝にたわわに実っています。まるで、どうぞ召し上がってくださいといわんばかりです。
「ユーくん、あたし、のどがかわいたし、おなかもすいちゃったわ。ねぇ、あの真っ赤な実、食べられるかしら?」
「さぁ、どうかなぁ?はじめてみる果実だよ。でも・・・おいしそうだね。じゃぁ、ぼくがちょっと味見をしてみようか?」
ユーくんは、その真っ赤な実を、おそるおそる口に入れてみました。甘ずっぱい味が、口の中いっぱいに広がります。なんだかふんわりとしたいい気分になりました「とっても、おいしいよ。マーヤも食べてみたら?あ〰あ、とてもいい気持ち!」そう言うと、ユーくんはどんどんその赤い実を食べ始めたのです。
そして、ユーくんに負けずに食べはじめたマーヤも、ふんわりと雲にでも乗っているようないい気分になりました。

「ようこそ、私の国にいらしてくださいました。心から歓迎いたしますわ」
澄んだやさしい声がしました。
マーヤとユーくんがびっくりして声のする方をふりむくと、黄色のロングドレスを着た美しい女の人が、静かにほほえんで立っていました。タンポポの花を編んで作ったような王冠を頭にかぶっていました。黄色の美しい宝石が花の間できらめいています。
「わたくしは、タンポポ国の女王です。このタンポポ野原が気に入っていただけたかしら?昔、私の国は地球のほとんどの場所に広がっていました。でも今では、私たちの暮らせる原っぱがどんどん減ってしまって、世界中からタンポポの精たちが次々とここにもどってきているのです。あなた達の住んでいらっしゃる都会にも、タンポポ野原は消えてしまったことでしょう。とてもさびしいことですわ」
女王様は、こう話されると、少し悲しそうな顔をなさいました。

それを聞いて、マーヤは思いました。
(タンポポの花だらけの原っぱなんて、あたし、今日はじめて見たわ。そうだわ、ママが言っていたっけ・・・。ママの小さい時には、町のあちらこちらに空き地や原っぱがあって、タンポポの花がいっぱい咲いていて・・・その黄色い花を摘んでは、首飾りや冠や腕輪やいろいろな物を作って遊んだものよ、ってね。でも、あたしはその作り方さえ知らないわ。それもそうよ!だって本物のタンポポの首飾りなんて、一度も見たことがなかったんですもの)

「さぁ、こちらへいらっしゃいな」
女王様は二人に向かって優雅に両手を差し出すと、蝶々のように軽やかに歩き出したので、マーヤとユーくんはすいよせられるように、女王様の後ろについていきました。どこまでも続く広い黄色いタンポポ野原を、どのくらい歩いたことでしょうか?
「さぁ、着きましたよ」
女王様が後ろをふりかえり、二人を見てにっこりなさいました。
絵本でしか見たことのないような美しいお城が、目の前にありました。
マーヤとユーくんは、目をみはるほど立派な大広間に案内されました。真ん中には、たくさんのタンポポの花を編んで作り上げた揺りイスが、二つ置いてありました。二人がすわるのに、ちょうどいい大きさです。
「さぁ、おかけなさいな。私は、この国を訪れる人には、タンポポ国の春の夢をさしあげることにしているのです」

わくわくしながら、マーヤとユーくんはその揺りいすにすわりました。するとそのいすがやさしく揺れはじめます。きっと、小さなタンポポの精たちが心をこめて、ゆらゆら揺らしてくれているのでしょう。
「さぁ、これをお飲みくださいな。特製のタンポポジュースですよ。」
女王様が、美しく輝くクリスタルのグラスに入った黄色のジュースを持ってきてくださいました。一口飲んでみると、とろりと甘い味が口の中いっぱいに広がって・・・まぁ、なんてうっとりとした気分になることでしょう。
女王様はハープをとりだしますと、ゆるやかに弦をつまびきはじめました。

  ポロロン ポロロロ
 
ポロロロ  ロロロロ
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マーヤは、森に囲まれた美しい湖でボートにのっていました。頭には黄色の花冠をかぶり、黄色の花の首飾りと腕輪をして・・・。これは、ママがタンポポの花で編んでくれたものです。ボートをこいでいるのは、たくましい体つきのパパ。ママは、楽しげになにか歌を口ずさんでいます。時々パパもつられて歌ったりしています。さわやかな春のそよ風が、ほほをくすぐります。
さぁ、そろそろボートからおりて、ランチタイムとしようよ」と、パパが言います。マーヤは、ママの持っている大きなバスケットのなかみを、あれこれ想像します。

ユーくんは黄色の気球に乗って、高いお空をふわりふわり・・・これから、パパとママと3人で世界旅行に出かけるのです。はるか下の方に、畑や川や森が見えます。家がマッチ箱くらいの大きさにしか見えません。遊び疲れた小鳥達が、気球のふちにとまって、ピーチクピーチク歌ってくれます。
「あー、ぼく、とってもお腹がすいちゃったよ」
「お食事にしましょうね。ユーくんの好物を沢山持ってきているのよ」と、花飾りがいっぱいついた大きな帽子をかぶったママが、やさしく言います。ユーくんは、なぜか胸がキューンとし始めます。
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「マーヤ!」「ユーくん!」
二人は、ハッとして目を覚ましました。二人はいつの間にか、あの大木の穴の入り口のそばにいて・・・木によりかかって居眠りしていたのです。
マーヤの目には、心配そうにたたずんでいるパパの姿が見えました。
ユーくんの目には、涙ぐんでいるママの姿が見えました。
「パパー!」マーヤは、ユーくんのパパにしがみつきました。そして、ユーくんも「ママー!」とさけんで、マーヤのママにしがみつきました。
「まあまあ、二人ともどうしちゃったの?パパとママを取り違えるなんて!」
マーヤのママが、おどろいて言いました。それから、ちょっぴり悲しそうな顔をしました。ユーくんのパパも、ひどくとまどっています。

「あのね、あたしたち、この穴の中にある縄ばしごを上ってね・・・タンポポ国に行ったのよ。でも・・・まぁ、おかしいわ!さっきの縄ばしごが消えちゃったわ」
木の根元の穴の中をのぞいたマーヤが、不思議そうな顔をして言いました。
「本当だ!おかしいな」ユーくんも、信じられないという顔をして、穴の中をのぞいています。
「あらあら、二人ともすっかり寝ぼけちゃって、いやーね。」
マーヤのママが、泣き笑いをしてそう言うと、二人をぎゅっと抱きしめました。

(でも、でも・・・さっきは、たしかに縄ばしごがあったのに!)と、
マーヤとユーくんは、そう思っています。Picture67blog


それから、一年後のことです。
マーヤはユーくんのパパと手をつなぎ、ユーくんはマーヤのママと手をつないで、さぁ、今日は四人で田舎へ出かけるのです。タンポポ野原のまだ残っているユーくんのパパの故郷へ。そこなら、まだ自然がいっぱい残っていたからです。大小4つのリュックの中には、テントや着替えや食料がたくさん入っています。今夜は、タンポポ野原でキャンプをすることになっているのです。
ユーくんとパパが、夕食当番を引き受けることになりました。
マーヤとママはタンポポの花を摘んで、すてきな髪飾りや腕輪を作るのです。そして今夜だけふたりは、女王様と王女様になるはずなのです。
今では、ユーくんにはやさしいママができ、マーヤにはたのもしいパパができたのでした。

                                                      <おしまい>

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