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2008年2月18日 (月)

<童話>熊パパと森の仲間たち②熊パパとフクロウ爺さん

フクロウ爺さんは、とても物知り。熊パパに、森で生きる知恵をたくさん教えてくれるよ。

爺さんは若い時から冒険家で、森から遠く離れたところまで飛びまわって、いろいろなことを見聞きしているよ。
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「熊パパ!ちかごろ川へ行っても、鮭が取れなくなっているだろう?」

「そうなんだよ。どうしてだろう?子どもたちは鮭が大好きなんだ。冬の前にはたくさん産卵後の鮭を食べて力をつけなくちゃいけないのにさ。いっとき全く鮭が川を上ってこないことがあったよ。でも最近は、少しだけやってくるようになったけれども・・・」

「ダムのせいじゃよ。あのはるか川下の人間の住む地域に、大きなダムができたんじゃ。でも心ある人間が、小さな川のような魚道というものを造ってくれたので、元気な鮭だけがそこを通ってこの付近までやっと来られるようになったんじゃよ」

「へぇ、そのせいで鮭が少なくなったのか」

熊パパが大きなため息をついて、首をすくめたよ。

「空が飛べるといいねぇ、世の中のことを自分の目で見られるなんて、いいな!」

「わしが見られる世界なんて、ほんのわずかさ。なによりも世界中を旅する渡り鳥たちの話が、わしの一番の知恵袋じゃよ。ホホー ホホー

鳥たちは長旅の途中の疲れを癒すために、この森の湖でひとときを過ごすのじゃ。

わしはいつも岸辺の低い木にとまって、彼らの話に耳を傾けるのさ。親しくなった渡り鳥の中には、わしの住んでいる木までおしゃべりをしに来たりするやつもおるがな。
なかには、嵐で傷ついてふらふらしている年老いた鳥もいるのじゃ。そんな時は、わしの薬草の知識をつかって治療してやるのじゃよ。ホホー ホホー」

「僕も渡り鳥と話をしてみたいな」
熊パパ、ちょっぴりうらやましそうだよ。

フクロウ爺さんと熊パパたちの住む森は、深い川に沿って切り立った高い崖の上の広大な台地の上にでき上がっていて、その反対側は海に面した高い断崖絶壁なんだよ。だから人間の住む遠くの低い土地からは、全く遮断されているのさ。おまけにその地域に住む人間たちは、この台地の森に精霊が棲むと信じているので、決して近寄らないのさ。それにこの急峻な崖を登ることは不可能だから、この森には鳥以外の生き物は入ってこられないしね。この台地の森の真ん中に澄んだ美しい湖があって、渡りをしない水鳥たちが、いつも幸せそうに泳いでいるよ。渡り鳥たちも、ここで休息していくんだ。

熊パパは秋の終りに、産卵を終えて眠りに着いた鮭を取る時だけ、秘密の通路を使って川に下りるんだよ。でもこの話はまたあとでね。


「ホホー ホホー 人間の住む地域では、食べられる木の実が減り始めているんじゃ。あちらにすむ動物たちは、さぞかし困っていることじゃろうて。これは森林が減り始めているせいだ。人間が大量に森林の伐採をしておるのじゃ。近頃この森の空気までまずくなっていると思わないか?そして、雨も汚れはじめておるぞ。そのせいで、この森の木も少しずつ死にはじめておるんじゃ」

「たしかに、この森の立派で元気な大木が、突然バッサリと倒れるのを何度か見ているよ。僕の父さんも、木の実を取ろうとして木に登って、木ごと倒れて死んでしまったんだ。僕のまだ小さかった時にね
熊パパは、腕組みをして考え込んだよ。


「熊パパよ、渡り鳥たちの話によれば、旅の道すがら毎年毎年世界中の森が減っていくのが見えるそうだ。また砂漠という砂だらけで緑のない土地が、増えているそうじゃよ」

「熊パパよ!我らの命の源の大切なこの森の木を決して減らしてはならんぞ!リスたちが、自分たちでは気がつかずに植林ということをしておるのは良いことじゃが、お前たち木の実を食べるものたちも、実を食べ終えたらその種を土に返さなくてはいけないぞ。種は、翌年には芽を出して・・・やがて大きな木に育つのじゃよ」

だから熊パパも坊やたちも、食べ終えたたくさんの実の種をとっておいてね、森のあちこちに小さな穴を掘ってひとつずつその種を入れて「来年の春にきっと緑の芽を出してね」と祈るように土をかぶせているんだよ。それを見ていた森の他の動物たちも真似をして、穴を掘って種を埋めているよ。来年の春が楽しみだね。

フクロウ爺さんはこうも言っていたよ。

「木の実を食べる渡り鳥たちが、時々この地に種をこぼしてくれるんじゃ。だから時々、見たことのない木が伸びてくることがあるじゃろう。鳥たちのおかげで、植物の生息地が広がるんじゃよ。渡り鳥たちは、渡りの前に大量の木の実を食べておくそうだよ。そして、緑の少ない土地にその種を落としているらしい。健気なものたちじゃよ」

「さてさて、このあいだ若い渡り鳥から、興味深い話をきいたぞ。ホホー ホホー」フクロウ爺さん、なんだかうれしそうだよ。

「爺さん、もったいぶらないで早く話しておくれ!」
熊パパは、じれったそう。

「はじめて渡りをした若い鳥だったから空から眺める世界は、ドキドキワクワクの連続だったそうだ。若い鳥の話は、実に新鮮じゃな。

さて、年上の鳥に先導されて、あちらこちらの森や湖で休みながら長い旅をつづけていたそうだが。ある時、遠くから見たところでは巨大な白・グレー・茶色の建物だけの人間の住む都会に向かって、先頭の鳥が一目散に飛び始めたそうな。なぜ、そんなところに向かっていくのか?その若い鳥にはさっぱり訳が分からなかったそうじゃよ。ところがじゃ、近づいてみると、その理由がわかったそうな。じつは、これにはこのわしもびっくり!ホホー ホホー」

「爺さん!じらさずに早く続きを話しておくれ」

「なんと都会の高い建物に囲まれた中心に、巨大な自然の森と湖が隠れていたそうじゃ。さらに若い鳥を驚かせたことには、その都会の建物のほとんどの屋上が緑地化されていて、花々が咲き乱れてチョウが舞い、緑の茂みがあったそうだ。そして人々がベンチで憩っていて、魚やカエルのいる池もあったそうな。建物の屋上同士がつながっているところもあるし、人間がボタンを押すと廊下みたいなものが伸びて、隣の建物とつながる工夫がされているものもあったそうじゃ。また緑地のなかには農地となっていて、青々とした野菜や米小麦が育っていたそうな。その若い鳥は好奇心旺盛だったから、屋上のあちこちを飛んで、いろいろな発見をしたようだよ。ホホー ホホー」

「へぇ、人間もなかなかやるじゃないか!きっと、その街の空気は澄んでおいしいにPicture82blog違いないよ」

そしてね、その話に付け足すなら・・・何とそのビル街の屋上には、スポーツをするための施設も造られていたんだよ。プールや野球場をはじめとした陸上競技用施設(お天気の日は、球が落ちないように網上の高い丸天井がついていて、雨の日はそれが透明なカバーで覆われるんだ)があって、ほとんどのスポーツを楽しむことができるんだ。それにね、屋上の緑地にしみた雨は、その土で浄化されて地下にあるタンクに溜められて、その建物の生活用水として使えるようになっているよ。森林の木を伐採する人間もいる一方で、こんな素敵なことを考える人間もいるんだね。建物の屋上って、もっといろんなふうに使えそうだね。

あれ・・・フクロウ爺さんは、木の枝で居眠りをはじめたよ。熊パパは、ほほえみながら坊やたちの待つ巣穴へとゆっくり歩いて行ったよ。熊パパは、森の仲間たちにきっとこの話をしてあげるに違いないよ。ふふふ・・・

 

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